証拠金は「ポジションを支える土台」、必要証拠金は「いま必要な土台の厚み」、証拠金維持率は「土台の余裕度」です。
本稿はこの3つを数式→実例→ツールの順で深掘りし、ロスカット回避・換算の落とし穴・複数ポジ合算・イベント時の縮小ルール・ストレステストまで体系化します。貼るだけで使えるJS電卓・維持率シミュレーター・Excelテンプレ付き。 重要:本記事は教育目的の一般情報です。特定サービスの推奨や投資助言ではありません。各社の最新条件(証拠金要件・維持率/ロスカット基準・手数料・レバレッジ・約定方式)は必ずご自身の口座で確認し、実売買は自己判断・自己責任で行ってください。
- 全体像:3つの指標を一枚で掴む
- 用語辞典:証拠金/必要証拠金/維持率/有効証拠金/フリー
- 必要証拠金のロジック:名目×公称レバの関係
- 維持率の意味と限界:式・挙動・落とし穴
- 実効レバと維持率の併読:安全域の作り方
- 見積通貨≠口座通貨の換算:典型ミスと鉄則
- ケースA:USDJPY(JPY口座)実計算+変動シナリオ
- ケースB:EURUSD(USD/JPY口座)実計算+換算
- 複数ポジ合算・ヘッジ時の評価:よくある誤解
- コストのpips化とBEライン:維持率への波及
- 時間帯・イベントでの数量ルール:私の運用メモ
- ストレステスト:維持率が危ない局面を先読み
- 固定%リスク法×証拠金:ロット逆算の標準化
- 安全域の設計図:目標維持率・フリー・上限ロット
- マージンコール/ロスカット回避:アラート運用
- 国内/海外・口座タイプ(ECN/STP)別の視点
- コード①:証拠金・維持率・実効レバ一括電卓(JS)
- コード②:価格シナリオで維持率推移シミュレータ(JS)
- Excel/Sheetsテンプレ+監査ログ(証跡)
- 練習問題40問・FAQ拡張・まとめ
全体像:3つの指標を一枚で掴む
- 必要証拠金=名目(価格×通貨数量)÷公称レバ
- 証拠金維持率(%)=有効証拠金(残高±含み損益)÷必要証拠金×100
- フリーマージン=有効証拠金−必要証拠金(新規・含み損バッファ)
私の運用基準:維持率は常時500〜600%を確保、実効レバは合算〜6倍、1トレードの口座リスクは0.5〜1.0%。イベント前後や薄い時間帯はさらに縮小。
用語辞典:証拠金/必要証拠金/維持率/有効証拠金/フリー
用語 | 定義 | 運用ポイント |
---|---|---|
有効証拠金(Equity) | 残高 ± 含み損益 | 瞬間的に変動。維持率・フリーの分母 |
必要証拠金(使用中) | 名目 ÷ 公称レバ | 複数ポジは合計。ヘッジでも相殺されない場合あり |
証拠金維持率(%) | Equity ÷ 必要 ×100 | ロスカット基準に接近するほど危険 |
フリーマージン | Equity − 必要 | 新規建てと変動耐性。小さい時のナンピンは禁物 |
名目(建玉想定元本) | 価格×通貨数量(換算含) | 実効レバ=名目÷Equity。評価通貨を揃える |
必要証拠金のロジック:名目×公称レバの関係
基本式
必要証拠金 = 価格 × 通貨数量 ÷ 公称レバ
公称レバは「上限」
上限を与えるだけで、実際のリスクは数量・損切り幅・維持率で決まります。
例(USDJPY/JPY口座)
155円、0.20L(20,000通貨)、レバ25 → 名目=¥3,100,000 → 必要=¥124,000。
維持率の意味と限界:式・挙動・落とし穴
式と直観
維持率(%) = Equity ÷ 必要 ×100
。含み損でEquityが下がると維持率が下がります。
落とし穴
- 「建てた瞬間は高維持率」でも、イベント一撃で急落。
- ヘッジでP/Lが相殺でも、必要証拠金は減らない場合がある。
指標前の対処
- サイズを事前に縮小(1/3〜1/4)、または見送り。
- アラート(例:300%注意/200%強注意)を設定。
実効レバと維持率の併読:安全域の作り方
実効レバ | 状態 | 運用の目安 |
---|---|---|
〜3倍 | 保守 | 指標でも耐性大 |
3〜6倍 | 標準 | 通常時の上限イメージ |
6〜10倍 | 攻め | 滑り/コストに敏感。縮小推奨 |
10倍〜 | 過熱 | ロスカット接近。即縮小 |
維持率(即死回避)と実効レバ(攻め具合)を同時に監視するのが実務。
見積通貨≠口座通貨の換算:典型ミスと鉄則
鉄則
- まず見積通貨で名目・pip値を計算
- 見積→口座通貨で換算(例:$→¥はUSDJPYを掛ける)
- 評価通貨を必ず揃える
これを怠ると、必要証拠金・維持率・損益評価が歪みます。
ケースA:USDJPY(JPY口座)実計算+変動シナリオ
初期
- 価格155、0.20L、レバ25、残高¥500,000、含み損益0
- 名目=¥3,100,000 → 必要=¥124,000 → 維持率≈403%
含み損の進行
含み損益 | Equity | 維持率 | コメント |
---|---|---|---|
0 | 500,000 | 403% | 余裕 |
-50,000 | 450,000 | 363% | イベント注意 |
-150,000 | 350,000 | 282% | 危険圏 |
ケースB:EURUSD(USD/JPY口座)実計算+換算
USD口座
- EURUSD 0.30L、1.0850、レバ500、残高$2,000
- 名目=$32,550 → 必要=$65.10 → 実効レバ=16.28倍(攻め)
JPY口座で同ポジを評価
名目(¥)=$32,550×USDJPY(例150)=¥4,882,500。pip値も$→¥に換算して評価。
複数ポジ合算・ヘッジ時の評価:よくある誤解
- 必要証拠金は足し算:ヘッジでも相殺されない口座が多い
- 実効レバ=名目合計÷Equity(通貨が異なれば換算後に合算)
- FIFO/Netting/Hedgingの約定仕様で維持率の挙動が微妙に変わる
コストのpips化とBEライン:維持率への波及
項目 | pips換算例(EURUSD) | メモ |
---|---|---|
スプレッド | 0.2〜0.5 | 時間帯で変動 |
往復手数料 | 0.4〜0.8 | $4〜$8/ロット |
スリッページ | 0.1〜1.0 | 指標・薄商いで拡大 |
コストをpips化→BEラインへ上乗せ。含み損域が長い戦略は維持率を圧迫しやすい。
時間帯・イベントでの数量ルール:私の運用メモ
- ロンドン〜NY前半:通常サイズ(実効〜6倍)
- NY後半/早朝:1/2サイズ(薄い・滑り)
- 重要指標前後30〜60分:1/3〜1/4 or 見送り
- 週明け・週末:ギャップ警戒で保守運用
体験談:これを徹底してから、ロスカット接近のヒヤリが激減。メンタルも安定しました。
ストレステスト:維持率が危ない局面を先読み
手順
- 想定の最大逆行幅(pips)を決める(指標×時間帯)
- 1pip金額×逆行pips×ロット=想定含み損
- Equity=残高−想定含み損→維持率再計算
- 危険ラインなら事前にサイズ縮小
逆行幅(p) | 想定含み損 | 維持率 | 判定 |
---|---|---|---|
20 | 小 | 良好 | 継続 |
50 | 中 | 低下 | 一部縮小 |
100 | 大 | 危険 | 回避/縮小 |
固定%リスク法×証拠金:ロット逆算の標準化
式
許容損失=残高×リスク%
、ロット=許容損失÷(損切りpips×1pip金額)
数量が決まる→名目・必要証拠金・維持率は一貫性を持って決まる。実務は0.5〜1.0%が目安。
安全域の設計図:目標維持率・フリー・上限ロット
- 目標維持率:常時500〜600%
- フリーマージン:新規/逆行に耐えるバッファを確保
- 上限ロット:複利の上振れ暴走を抑える天井
マージンコール/ロスカット回避:アラート運用
- 維持率アラートを多段化:300%(注意)/200%(強注意)
- 到達時は追加入金より先にサイズ縮小。構造的に安全化する
国内/海外・口座タイプ(ECN/STP)別の視点
環境 | 特徴 | 注視点 | 運用ヒント |
---|---|---|---|
国内 | 公称レバ低め・基準厳格 | 維持率・必要証拠金 | 厚めのバッファ、サイズ小さめ |
海外 | 高レバ可・仕様多様 | 実効レバ・滑り・相殺可否 | 固定%法・事前縮小・見送り |
ECN(手数料型) | スプ狭い+手数料 | コストをpips化 | 総コストで比較 |
STP(込み型) | 手数料なし・スプ広め | 実質BEの位置 | 戦略に合う方を選択 |
コード①:証拠金・維持率・実効レバ一括電卓(JS)
入力→名目・必要証拠金・維持率・フリー・実効レバを同時計算。スマホ幅に最適化。
<div id="mgn-tool" style="max-width:760px;display:grid;gap:8px">
<label>口座残高:<input id="balance" type="number" step="0.01" value="500000"></label>
<label>含み損益(マイナス可):<input id="floating" type="number" step="0.01" value="0"></label>
<label>公称レバ(例25/100/500):<input id="maxLev" type="number" step="1" value="25"></label>
<label>価格:<input id="price" type="number" step="0.0001" value="155"></label>
<label>ロット(1L=100,000):<input id="lot" type="number" step="0.01" value="0.20"></label>
<label>ペア種別:<select id="pairType"><option value="JPY">JPY含む(USDJPY等)</option><option value="NON_JPY">非JPY(EURUSD等)</option></select></label>
<label>見積→口座レート(例:USDJPY):<input id="qtToAcc" type="number" step="0.0001" value="1"></label>
<button onclick="calcMgn()">計算</button>
<div id="mgnResult" class="swell-box is-style-default"></div>
</div>
<script>
function calcMgn(){
const bal=+document.getElementById('balance').value||0;
const fl =+document.getElementById('floating').value||0;
const lev=+document.getElementById('maxLev').value||1;
const price=+document.getElementById('price').value||0;
const lot=+document.getElementById('lot').value||0;
const t =document.getElementById('pairType').value;
const q2a=+document.getElementById('qtToAcc').value||1;
const units=Math.round(lot*100000);
const equity=bal+fl;
const nominal=(t==='JPY')? price*units : price*units*q2a; // 口座通貨ベース
const reqMargin= nominal/lev;
const marginLevel= (equity && reqMargin)? (equity/reqMargin*100) : 0;
const free= equity - reqMargin;
const effLev= (equity)? (nominal/equity) : 0;
document.getElementById('mgnResult').innerHTML =
'<p><strong>名目</strong>:'+Math.round(nominal).toLocaleString()+
' / <strong>必要証拠金</strong>:'+Math.round(reqMargin).toLocaleString()+
' / <strong>維持率</strong>:'+marginLevel.toFixed(1)+'%'+
' / <strong>フリーマージン</strong>:'+Math.round(free).toLocaleString()+
' / <strong>実効レバ</strong>:'+effLev.toFixed(2)+'倍</p>';
}
</script>
コード②:価格シナリオで維持率推移シミュレータ(JS)
想定逆行シナリオ(pipsの配列)を入れると、含み損→Equity→維持率の推移を一括試算します。
<div id="sim-tool" style="max-width:760px;display:grid;gap:8px">
<label>1pip金額(口座通貨/1L):<input id="pip1L" type="number" step="0.01" value="1000"></label>
<label>ロット:<input id="simLot" type="number" step="0.01" value="0.20"></label>
<label>残高:<input id="simBal" type="number" step="0.01" value="500000"></label>
<label>必要証拠金(固定):<input id="simReq" type="number" step="0.01" value="124000"></label>
<label>シナリオpips(カンマ区切り):<input id="path" value="0,-20,-50,-80,-100"></label>
<button onclick="runSim()">シミュレート</button>
<div id="simOut" class="swell-box is-style-default"></div>
</div>
<script>
function runSim(){
const pip1L=+document.getElementById('pip1L').value||0; // 例:USDJPY×JPY口座=1000
const lot=+document.getElementById('simLot').value||0;
const bal=+document.getElementById('simBal').value||0;
const req=+document.getElementById('simReq').value||0;
const path=(document.getElementById('path').value||'').split(',').map(x=>+x.trim());
const pipVal = pip1L*lot; // 口座通貨/pip
let rows = '<table><thead><tr><th>pips</th><th>含み損益</th><th>Equity</th><th>維持率%</th></tr></thead><tbody>';
path.forEach(p => {
const pl = p * pipVal;
const eq = bal + pl;
const ml = (eq && req) ? (eq/req*100) : 0;
rows += `<tr><td>${p}</td><td>${Math.round(pl).toLocaleString()}</td><td>${Math.round(eq).toLocaleString()}</td><td>${ml.toFixed(1)}</td></tr>`;
});
rows += '</tbody></table>';
document.getElementById('simOut').innerHTML = rows;
}
</script>
Excel/Sheetsテンプレ+監査ログ(証跡)
# 入力:残高B、含み損益C、公称レバD、価格E、ロットF、見積→口座レートJ、ペア種K("JPY"/"NON")
通貨数量 = F*100000
名目(口座通貨) = IF(K="JPY", E*通貨数量, E*通貨数量*J)
必要証拠金 = 名目 / D
有効証拠金 = B + C
証拠金維持率(%) = 有効証拠金 / 必要証拠金 * 100
フリーマージン = 有効証拠金 - 必要証拠金
実効レバ = 名目 / 有効証拠金
# 監査ログ列(推奨)
日時 / セットアップ / 採用ロット / 目標維持率 / 実効レバ / 想定逆行(p) / 維持率見込み / 結果 / 所感
練習問題40問・FAQ拡張・まとめ
練習問題(抜粋40)
- 必要証拠金の式を口頭で言えるようにしよう。
- USDJPY=155、0.20L、25倍、残高¥50万。名目・必要・維持率?
- 上記で-¥5万の含み損。維持率は?
- EURUSD 0.30L、1.0850、500倍、USD口座$2,000。名目・必要・実効レバ?
- JPY口座で上の名目(¥)。USDJPY=150で換算。
- 複数ポジの必要証拠金の合算方法は?
- ヘッジでも必要証拠金が減らない理由(要点)。
- フリーマージンが小さい時のNG行動を1つ。
- 維持率アラート:注意/強注意の目安は?
- コストをpips化するメリットは?
- 固定%1%・残高¥60万・SL20p・1L=¥1,000/p。推奨ロット?
- イベント30分前後の数量ルールを自分の言葉で。
- 見積→口座換算を忘れると何が狂う?
- 実効レバ〜6倍とした理由(定性的)。
- NY後半が危険な理由を2つ。
- 名目・必要・維持率の因果を一文で。
- ロスカット基準100%に接近。最優先行動は?
- 連敗時の自動縮小ルール例(70%→50%など)。
- DD20%時に行うべきこと。
- 上限ロット設定の意義は?
- USD口座でUSDJPY=150。1Lの1pipは何$?
- JPY口座でUSDJPY。1Lの1pipは何円?
- EURUSDのpip値をJPY口座で評価する手順。
- スキャルで利幅4p・総コスト1.2p。実質RRの見方。
- FIFO/Netting/Hedgingで維持率が違う理由(概略)。
- 必要証拠金が急増する場面を2つ。
- フリーマージンの役割を一文で。
- ストレステストの手順(要点)。
- 固定額法と固定%法の違い(長短)。
- 分割エントリーと維持率の関係。
- 部分利確の維持率への副作用は?
- 手数料型とスプレッド込み型のBE位置の違い。
- USDJPYロング0.20Lで-80p。JPY口座での含み損。
- 上の状況でEquityと維持率(必要=¥124,000)
- 実効レバの定義と意味。
- 安全域500〜600%を守れない時の選択肢。
- 見送り判断の定量トリガー案を1つ。
- 週明けギャップ対策のサイズ運用。
- 監査ログ(証跡)に必須の3項目。
- 今日から実行する最小の改善を1つ。
FAQ(拡張)
必要証拠金はどこまで正確に見積もる?
評価通貨を必ず口座通貨に統一。複数ポジは合算、ヘッジ相殺不可の前提で厳しめに。
維持率は何%以上あれば安全?
戦略・口座に依存しますが、常時500%目安。イベント・薄商いではさらに厚く。
連敗中にすべきことは?
サイズ縮小(例:70%→50%)、セットアップの厳格化、見送りを選択肢に。
まとめ
- 必要証拠金=名目÷公称レバ、維持率=Equity÷必要×100、フリー=Equity−必要。
- 評価通貨を揃え、合算で評価。コストはpips化。
- 目標維持率500〜600%、実効〜6倍、口座リスク0.5〜1%を起点に相場環境で微調整。
体験談(差し替え用)
ロンドン前半は維持率600%台キープ、NY後半は1/2ロット。指標30分前後は原則見送り。固定1%・SL20pに統一してから、DDが浅くなり、ロスカット接近が激減。数量の規律がメンタルも守った。
編集・執筆:FX総合研究所(編集部)
監修(推奨):登録業者/有資格者による用語・計算ロジックのレビュー(各社仕様は口座で最終確認)
最終更新:2025-10-07
免責:本稿は教育目的の一般情報であり、投資助言ではありません。
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